時代を変える中国のネットアイドル「ワンホン」!
ワンホン(網紅)とは?
みなさん「ワンホン」というのを知っていますか?
いま中国は世界最大のインターネット大国です。
ネット人口は、7.2億人を超えています。
そんなネット社会の発達した中国でソーシャルメディアにおいて強い影響力をもつ人がワンホンです。
ワンホン(網紅、Wanghong)とは、中国のネットアイドルで、芸能人ほどの知名度はないけれどネット上で多くのフォロワーを集めて有名になり、影響力を持った動画や生放送を中心に活動するインフルエンサーのことです。
いまやワンホンは、中国で32兆円にのぼる経済的な影響力を持っています。
中国語で「網」はインターネット、「紅」は大人気の意味を指します。
つまり、網紅(ワンホン)とは中国語で文字通りインターネット上の人気者という意味になります。
ワンホンは、特に動画共有サービスに通じている人のことを指します。
要するに、ワンホン(網紅)とは、動画をメインとして情報発信するインフルエンサーのことです。
もっと簡単な言い方をすると、中国版「You Tuber」ですね!
人気のワンホンともなると、その拡散力はすさまじく数か月で数百万人のフォロワーを得るケースもあります。
それも昨日まで普通の大学生だった人が一夜にして動画で注目を浴びて数百万人ものフォロワーに支持されることが起きています。
こうした影響力に企業が注目しています。
なかには1時間の生放送をすることで1,300万円の収入(年収)を稼ぐ人まで現れています。
生放送のワンホン・趙千万
ワンホンは、動画消費者の若者を引き付ける“何か”を持ち、動画内で提供企業の商品やサービスの宣伝を行います。
動画配信で歌を歌っているワンホンに趙千万という女性がいます。
趙千万のウリは「歌唱力」。
専用のアプリを使って自宅から生放送をしています。
趙千万にはいつも生放送を見てくれる1,400万人ものフォロワーがいます。
なんと趙千万は一晩で15~16万円も稼ぐこともあるそうです。
しかし、それは生放送のワンホンとしては飛びぬけているわけではなく、ごく普通だといいますから驚きです。
一晩でそれだけの収入を得られるのなら、競ってワンホンになりたがるのも当然ですね。
趙千万さんと同じアプリを使って生放送をしている人は中国全土に650万人もいます。
「グルメ」や「ダンス」などのカテゴリーに分かれて活動していますが、趙千万さんは「顔レベル」という顔面偏差値のカテゴリーで活動しています。
このように自分の特技や長所を生かして活動できるのがいいですね。
ライブ配信をすることで視聴者からのプレゼント(仮想通貨)を受け取り換金する仕組みになっています。
ファンは生放送中に電子おひねりを投じていきます。
人気のワンホンになると視聴者からのお小遣いだけで高額収入を得ることが出来るのです。
ステマで大金を稼ぐワンホン・シンハオ
幸猿児(シンハオ)は大学に通いながら動画コンテンツの配信をしているワンホン(学校の美少女)で、フォロワーは280万人もいます。
幸猿児(シンハオ)は学生生活を紹介する自分の動画に広告を入れることで大金を稼いでいます。
シンハオは、配信する動画の中で化粧品などを紹介します。
化粧品メーカーからは広告費をもらうことができ、さらにシンハオの動画を見たフォロワーが化粧品を買ってくれるのです。
シンハオが行っているのはテレビのCMのような直接的な商品紹介ではなく、シンハオの日常生活のなかで自身が化粧する姿を見せながら商品を自然に紹介するやり方です。
この手法はステルスマーケティング「ステマ」と言って、見ている人に分からないように広告をだす手法です。
要するに、シンハオが化粧をしてキレイになった姿を見せて、最後に自分がいま使ったのは“このブランドの化粧品よ”と伝えるのです。
これで宣伝効果はばっちりです。
シンハオみたいになりたいと考える女性たちが動画の中でシンハオが使用している化粧品を購入するからです。
(もちろん全員が購入するわけではありません)
趣味趣向が多様化した現代では、押し付けられたような広告には興味を示しません。
ですが、ワンホンのような「私のライフスタイルをシェアする」という形式で伝えることで商品に興味を持ったり、商品を購入するようになるのです。
シンハオのフォロワーやファンにとってシンハオは“身近な友だち”のような存在なのです。
身近な友人が「これいいよ!」と教えてくれれば少なくとも話を聞いてくれて、興味を持ってくれますよね。
つまり、シンハオというワンホンの役割とは、商品を売りたい企業とその商品を購入するだろうと思われる顧客を結びつけることなのです。
それが芸能人でもなく、有名人でもない一般の学生が行ってしまうということが新たな時代のマーケティングなのです。
やはり芸能人には憧れがあります。
憧れがあるということはそこに距離が発生するということです。
それに比べて、ネットで活躍するアイドル(ワンホン)たちには距離を感じないということが大きな要因なのです。
ちなみにシンハオの昨年の年収は2550万円だそうです。
中国の経済を動かすワンホンの存在
シンハオと同じように広告収入で稼ぐワンホンは、中国全土に350万人もいるのです。
いま中国経済は、ワンホン抜きには語れなくなっています。
中国のネットショッピングの市場規模は世界第一位の約128兆円。
そのうちのおよそ1/4の約32兆円がワンホンの影響を受けた消費だと分析されています。
スーパーワンホン「ジャン・ダーイー」の年収はなんと15億円だそうです。
ジャン・ダーイーは若い女性の心を掴み、彼女が紹介した商品は飛ぶように売れます。
その売り上げは、40秒で1500万円。
20分間で15億円。
信じられないほどの影響力です。
この基礎にあるのは中国の市場の大きさです。
つまり、人口の多さです。
さらにルアンというマネジメント会社はワンホンそのものを育成する事業を行っています。
ルアンのように、新しいワンホンを創り出し、活躍の支援をする企業があることもワンホンが増えている要因なのです。
崩れ行く既存のテレビ局
こうしたワンホンの出現と活動が意味するものはなんでしょうか?
ひとつ言えることは、ワンホンの活動は時代を動かす新たな流れであるということです。
つまり、「ネットによる配信で新しいビジネスが成り立っている」、また、「新しい職業であり、いままでになかった新しい時代の収入を得る方法が出現した」ということを意味します。
こうしたネットの動向は、中国の人口が多いので、日本よりも規模が大きいです。
規模が大きい(人口)から動く金額も当然のごとく大きくなります。
日本では、テレビで流れるCMに登場するのは、ほとんど芸能人などの有名人です。
ですが、ネットの世界では逆に芸能人よりもシンハオなどの一般人が活躍しているのです。
ここに大きな違いと時代の違いが表れています。
一般人が大きな影響力を持つ時代になってきているということです。
要するにテレビなどのメディアは古い時代のメディアであり、ネットの動画配信などは新しい時代のメディアなのです。
これは歴史家のトインビーが言っていたように、古い時代の価値観は新しい時代の価値観からの挑戦を受ける宿命があるということです。
テレビというメディアは、新しい時代のメディアから滅ぼされる可能性があることを意味しているのです。
すでに、広告を出す企業の多くはネット広告に切り替える流れが出来ています。
テレビの世界では、そのほとんどが一方的な放送なのに比べて、ネット配信ではリアルタイムで双方向の通信が可能となっています。
少し大げさな言い方をすれば、テレビという片道しかないメディアはネットというメディアに侵略されつつあるということです。
昭和の時代の人には想像も出来ないテレビ局が倒産するという可能性も十分に起きてこようとしているのです。
変わりゆくメディアの姿
結局、簡単にいってしまうと人々の眼や関心をひきつけるものが大きな影響力を持つということ。
それは芸能人や有名人ではなく、ごく平凡な普通の暮らしをしている人がネットを通じて大きな影響力を持つ時代となっているということです。
個人のネット配信が、大企業であるテレビ局と対等以上の戦いをするだけでなく、打ち負かすことが出来てしまう新しい時代を迎えようとしているのです。
〈若い人に一言〉
10年後、20年後、テレビ局は姿を消しているかもしれませんよ。
ネット配信に滅ぼされて廃れた職業(業界)となっているかもしれません。
いまはまだ女子アナなどが花形職業とされていますが、女子アナはやがて日本版ワンホンに負ける時代が来る可能性があります。
未来の職業選択としてテレビ局というのは、最適な職業選択ではないかもしれません。
果たして既存のテレビ局がネット社会で生き残れるでしょうか?
生き残るには自ら変貌を遂げるか、新しい時代の価値観を打ち負かすしかありません。
ですが、時代は常に新しい潮流が起きてきます。
いま押し寄せているネット社会の潮流を押し流し、勝利することは無理でしょう。
「脱皮しない蛇は死ぬ」という諺がありますが、テレビ局はネット社会を警戒しながらも、どこか「テレビは消えないはずだ」という思い込みがあるように感じます。
将来、テレビ局を凌駕する番組の内容と量を持つネット配信のビジネスが発生すれば、視聴者にとって便利で使いやすくなります。
そのときテレビ局の存在意義はあるのでしょうか?
個人的には、「テレビっ子」のわたしですが、ネット配信で質の良い番組が無料で好きなときに好きなだけ見られたら、テレビを見ないかもしれません。
AIに奪われる職業がある一方で、新しい職業が生まれようとしているのです。
お読みいただきありがとうございました。